日本人とドイツ人のハーフとして生まれてきた我が家の子供たちに、自分のことをなに人と認識しているのか、インタビューしてみました。
母親の私から見た我が子は日本人
以前のブログ記事にも書きましたが、私自身は「我が子はハーフになるんだ!」という意識を特に持つことなく出産し、育児をスタートしました。
ただ、赤ちゃんというものは言葉を覚えていくものですから、自然と「ドイツ語?日本語?」「2ヶ国語とも習得するには?」というテーマと向き合うようになり、「我が子はハーフなんだよな」と徐々に意識するようになっていきました。
でも潜在的な部分では、第1子の娘のことを「日本人」と思っている自分もいました。「日本人である私から生まれた子供=日本人」というごく自然な感覚が無意識に自分の中にあったのです。
その感覚に気付いて、「面白いなぁ」と思ったことを今でもよく覚えています。
娘とは日本語のみで会話をしていた、ということも大きく関係しているのでしょうね。
「○○ちゃんは、なに人?」と聞いてみた
そんなある日、娘に「○○ちゃんは、なに人?」と、興味本位で唐突に聞いてみました。4歳前後の頃だったと思います。すると娘は、
「ドイツ語ができる日本人^^」
と即答しました。
私には思いつきもしなかった答え。「うまいこと言うなぁ!」と感心すると同時に、「ハーフである娘はこういう感覚を持っているんだ!」と、ほんの少しだけハーフっ子の置かれている状況が分かったような気もしました(本当の意味ではハーフっ子の気持ちを私が理解することは不可能なのですが)。
生まれてからずっと母親である私と密な時間を過ごしてきているので、「自分も母親と同じ日本人」と娘が認識しているんだと知り、これはとても興味深い出来事でした。それまで娘に向かって、○○ちゃんは日本人だよ、とも、ドイツ人だよ、とも、ハーフだよ、とも伝えたことはなかったので。
「○○くんは、なに人?」― ひと味違う息子の答え
そして数年後。子供たちを連れて日本に一時帰国中に、親戚大勢で集まっていた時のこと。以前娘に「なに人?」と聞いてみたエピソードをみんなに話すと、「じゃあ今度は○○くんにも聞いてみよう!」と、弟である息子に同じ質問をする流れになりました。
みんなで「ねぇねぇ、○○くんはなに人?」と聞くと、息子はしばらく考えてから、
「今は日本人。」
と答えました。この答えには、「おぉ~!なるほど~~!」とみんなで大盛り上がり。「今は……」って、ハーフの子にしかない思考ですよね。
今は日本に滞在中で、日本語だけを話しているから、「今は日本人」なんですね。ということは、息子の中には、自分が日本人でもありドイツ人でもあるという感覚がすでにあったということ。娘とは違っていて、とても興味深いなと思いました。
意識は「日本→ドイツ→日本」と変化
このように、幼い頃は今ある状況をごく自然にそのまま受け入れて、自分がハーフであるということについて深く考えることもなかったわけですが、それは成長と共に変化していきます。
今でこそ完全に日本寄りな娘ですが、どちらかというとドイツ寄りな時期もありました。幼い頃は自分を日本人だと思っていたほどだったのに、日本語の勉強を嫌がるようになり、やがて友達の前では日本語を話さなくなり……。
毎年夏休みに日本に行くのは楽しみにしていましたし、日本の食べ物も好きだし、私との会話もずっと日本語のみで、それは拒否しない。
けれど自分が他のみんなと違うということが嫌だったようで、11~13歳くらいの頃は、友達の前ではわざとらしいくらい思いきりドイツ語で私に話してきました(笑)。
そしてこの頃は、「日本人っぽい顔じゃなくてよかった~」ともよく言っていました。娘は何も言わなければ日本人(アジア人)とのハーフだとは誰も気づかないような顔立ちなので、変に目立つこともなくクラスのみんなに見た目が馴染めている、よかった!ということでした。
日本のことは普通に好きだけれど、とにかく「他と違う」ということが嫌だったようです。
そしてまた、次の変化がやってきます。アニメなどの日本のポップなカルチャーを通して「日本好き度」がどんどん増していき、留学を考えるほどになった頃には、「ドイツ人と日本人のハーフでよかった^^」と言うようになります。
仲の良い友達がいて普通に楽しい生活を送っているから、ドイツ人であることに満足してるし、日本は世界中で人気のあるアニメの発祥地であって、自分はその日本人でもあるということが誇り。両方のいいとこ取り~^^みたいな感じだったようです。
その頃からでしょうか。また友達の前でも堂々と日本語を発するようになってきました。成長して、あまり周囲を気にしすぎなくなってきた、ということもあるのだと思いますが……。
そして娘の日本好きはどんどん加速していき、いつのまにか娘の中で日本が優位に立つ状態になりました。アニメや音楽(Jポップ)だけではなく、日本人が好き、日本の社会の方が居心地がいい、というのも大きいようです。
「何で私の顔には日本人要素が全くないの(泣)」とまで言うようになり、意識がどう変わっていくか、本当に分からないものですね。
自分とは逆にだいぶ日本人寄りの顔立ちをしている弟には、「日本人の顔でいいなぁ!ずるい!!」とよく言っているほどです(苦笑)。
約10年ぶりに「なに人?」と聞いてみた
そして先日、子供たちに改めて「自分のことをなに人と認識しているか?」と質問してみました。
娘は少し悩んでから、「ドイツ人……かな……。」と回答。そう思いたくはないんだけど、それが実際の感じ方、というニュアンスでした。
「日本語は普通にしゃべれるし、日本のことよく知ってるし、留学して日本の学校にも通ったけど、自分のことを日本人だとは全く思えない?」と聞くと、「うーん……。20%くらいは思えるかなぁ……?」とのこと。
そして、「だって、ドイツの学校では誰も私のこと日本人だなんて思ってない。クラスメイトは知ってるけど、先生たちはみんな、私のこと普通にドイツ人だ(ハーフじゃない)と思ってると思うよ。」と続けました。
「留学を終えて」の記事にも書きましたが、ドイツの学校では先生と生徒の関係性が薄く、先生は生徒たちのことをあまりきちんと把握していないことが多いのです。
「そして、日本でも誰も私を日本人のハーフだとは思わない。普通に外国人だと思われる。人から日本人として見られることが全くないから、自分のこと日本人って思えないってことなのかなぁ?」と分析していました。
私もこれまでそんな風に考えたことはなかったのですが、「確かに一理あるかも!」と思い、娘と一緒に「あとで日本人顔の弟にも聞いてみよう!何て答えるかな^^」ということになりました。
その夜、早速息子に「自分のこと、なに人だと思ってる?」と聞いてみると、「うーん……。何か、学校ではみんなに日本人だと思われてて、『日本人』って言われるから(みんな、息子が半分ドイツ人だと知識としては知っていますが)……。日本人…なのかなぁ??」
との答えが返ってきました!これにはびっくり!
息子は見た目こそ日本人っぽいですが、日本語は娘と比べるとそれほどできないし、アニメや日本の音楽にも興味がないし、日本との関わり方は娘よりかなり薄い感じなのですが、それでも自分のことを少なくとも半分は「日本人」だと認識しているようなのです。
これは娘の分析通り、「自分をなに人と認識するかは、周りからどう認識されているか、ということと関係がある場合が多い」ということなのかもしれません。
普段私たちは、「ドイツ人」、「日本人」、「ハーフ」である前に、「父・母・娘・息子の4人家族」というのが大前提で、家の中では常にドイツ語と日本語が飛び交い、もうそれが当たり前のことなので特に何も考えないで生活しています。でもこうやって改めて真正面からこのテーマと向き合ってみると、なかなか興味深い発見がありました。
ハーフの子育て、奥が深いです!